武雄の「菓子職人の小屋 デタント」さんの再編集を担当しました。

施工 ホームテラス

設計・監理 大庭早子設計事務所

ボーダー割肌瓦、モルタル床壁など施工 山口左官

ボーダー割肌瓦 山田脩二淡路かわら房

アイアンサッシ アトリエ27

レジ台、包台 なごみの木

ゴールドリーフ OCTO SIGN

包装紙 撮影/山田脩二 デザイン/押見保 印刷/福岡印刷

編集 梅木誠太郎商会

 

 

10周年を迎えた武雄の「菓子職人の小屋 デタント」さんの再編集(改修)。「町工場(こうば)的インダストリアル」をテーマに素材感にこだわってディレクションした。

店舗面積を拡張するために、下屋部分に新たにアイアンサッシを取り付けた。制作は福岡のアトリエ27さん。ハードすぎない雰囲気でまとめてもらった。ところどころに残る溶接あとに手作りの風合いが残っている。また一番目立つガラス面にはOCTO SIGNさんによるゴールドリーフ(金文字)が入っている。すべて手描き。立体感のある光沢は、カッティングシートとは大きく異なっている。

ガラス戸を空けて、中に入ると正面に山田脩二淡路かわら房によるボーダー割肌瓦の壁が現れる。ケーキのような積層した独特の風合い。男っぽい印象の素材をどう洋菓子店にマッチさせるか。設計・監理の大庭早子設計事務所と施工の山口左官によるモックアップでの検討が数日間続いた。施工では素材の個性を最大限に活かすために、表面のレベルを4段階で組み上げ立体感を強調。焼菓子ギフトを飾りつける棚がある左手の壁は極力シンプルに、包台の上にある右手壁にはノッチ(くぼみ)を3カ所つくり、小さなものを置くことで雰囲気を変えられるようにした。

今回の改修の目的は「焼菓子をフューチャーする」こと。以前は駄菓子的に売っていたが、デタントの焼菓子が元々持っている力に合ったディスプレイに変えることで、地元のみなさんに「手土産」として選んでもらうようにする。一番変わったのが配置。お客さんの眼にまず飛び込んでくるよう、ドアを開けて正面にある平台に焼菓子を置いた。奥にはしっかりした質感を持つボーダー割肌瓦の壁。薄いグレーの什器(今後、左官に地元の土で再制作してもらう予定)にこげ茶色の焼菓子が並んでいる。

意外と印象に残ってしまう床はモルタルに墨を混ぜたもの。強いこだわりを持つオーナーのために山口左官さんが何度も見本を作った。目立ちすぎないが、全体を支える包容力のある仕上がりになった。

今回の改修でカタログから選んだパーツは照明と蛇口のみ。他のものはすべて職人さんへのオーダーとなった。手仕事でしか出せない素材感は、町のケーキ屋の哲学をそのまま表現している。年月を経て、どんどん魅力的な表情を見せてくれることを楽しみにしている。

↓参考までに改修前の写真を…